日本 文化庁が日本遺産6件に再審査、岩手・二戸など危機と指摘
文化庁が今年度、全国6件の日本遺産について認定取り消しの可能性がある再審査の判定を下したことが、読売新聞社の報道で分かった。認定継続を目指す関係自治体は、文化財の活用方法や観光振興における連携の見直しを迫られている。 文化庁が全国6件の日本遺産で再審査を実施 文化庁は今年度、全国の日本遺産のうち6件について、認定取り消しの可能性がある「再審査」と判定した。日本遺産は2015年に始まった制度で、地域の文化財群をストーリーにまとめて発信し、地域活性化を図る仕組みとなっている。有形や無形の文化財を地域が整備活用して国内外へ発信する取り組みが審査され、10月1日時点の全国の認定件数は104件にのぼる。文化庁は認定後の3年間、観光ガイドの育成やイベント開催、文化財の保全費用などを対象に、関係自治体へ年間最大1000万円の補助金を支給してきた。原則として市町村が都道府県を通じて申請し、認定から6年後、9年後、15年後に継続審査が行われる仕組みだ。 岩手県二戸市などの奥南部漆物語が直面する課題 岩手県二戸市は隣接する八幡平市と共同で、本堂などが国の重要文化財に指定されている天台寺や漆採取の道具、漆器など約40件の文化財で構成するストーリー「“奥南部”漆物語」について、再審査を受けることになった。旧南部藩領北部に位置する奥南部は、中尊寺金色堂などの国宝に使用されている「浄法寺漆」の発祥の地とされている。現地では漆の採取体験や職人との交流を通じて漆の歴史を知ることができ、日本遺産認定後の両市を訪れた観光客は増加傾向にあり、2024年は延べ約192万人が訪れた。しかし、今夏の文化庁の現地調査では、「文化財間を周遊させる仕掛けが不十分」などとして両市の連携不足が指摘された。二戸市日本遺産プロジェクト推進室の長畑勝司主任は「対応を進めて、再審査を通過したい」と述べている。 福井県や岡山県など他の再審査対象地域の現状 明治末期に1枚の切符で国内の鉄道や海路、シベリア鉄道を利用して欧州へ行くことができた「欧亜国際連絡列車」のストーリーを展開する福井県敦賀市、南越前町、滋賀県長浜市も再審査の対象となった。同ストーリーでは20年度の認定以来、補助金を活用して2次元コードによる文化財紹介の多言語対応などを進めてきた。南越前町観光まちづくり課の担当者は「自治体の負担金だけでは観光振興に向けた環境整備の資金が足りない」と困惑を示している。また、九谷焼や伊万里焼などの工芸品や建築物を彩った赤色の顔料「ベンガラ」の生産で栄えた岡山県高梁市が「『ジャパンレッド』発祥の地」として申請したストーリーも、同様に再審査の判定を受けた。 除外された過去の事例と今後のスケジュール 昨年度までに認定を除外されたのは、太宰府天満宮(福岡県太宰府市)などの文化財で構成する「古代日本の『西の都』」の1件のみである。同件は再審査を受けた後の25年2月に候補地域となった経緯がある。文化庁は観光振興の取り組みが不十分だと判断した場合、地域活性化計画の修正を求めて現地を視察するなどの再審査を実施し、「認定取り消し」や「候補地域への格下げ」を決定する。今年度の再審査の結果は、12月末に公表される予定となっている。文化財制度に詳しい「みらい観光文化リサーチベース」(東京)の佐滝剛弘代表は、「日本遺産は、これまで光の当たるなかった文化財に光を当てる意義のある制度だ」と指摘する一方で、「自治体は仮に認定が取り消されても、地域文化を守るために必要な施策であれば積極的に取り組むべきだ」と語っている。