日本 厚労省、重要医療機器の安定供給へ増産や備蓄に補助制度を新設…ECMOなど対象に検討
厚生労働省は、医療機器の安定供給体制を強化するため、特定機器の増産や備蓄を行う企業への補助制度を新設する。新型コロナ禍で露呈した輸入依存のリスクを背景に、生命維持に不可欠な機器を「安定供給確保医療機器(仮称)」に指定し、強固なサプライチェーンの構築を目指す方針だ。 輸入依存からの脱却と供給網の再構築 厚生労働省は、国民の生命に直結する医療機器の安定供給に向けた体制整備に乗り出す。現在、国内で使用される医療機器の約6割を海外からの輸入に頼っている現状がある。同省は、中国によるレアアース(希土類)の輸出規制強化や、中東情勢の悪化による石油関連製品の供給不安定化などをリスク要因として認識している。国際情勢や感染症の世界的な流行に左右されない強固なサプライチェーンを構築することが、今回の施策の狙いだ。 「安定供給確保医療機器」の指定基準 同省は、供給が滞ることで患者の症状が重篤化したり、死亡につながる恐れがあったりする医療機器を「安定供給確保医療機器(仮称)」に指定する。来年度には有識者による検討会を設置し、製造・販売事業者へのヒアリングを実施した上で対象機器を選定する。選定の判断基準は、不足が患者の病状に与える深刻度や、代替品の有無などとなる。指定後は、調達先の多角化や代替製品のリストアップを進め、必要に応じて事前の備蓄を要請する。 補助対象となる主要な医療機器の候補 今回の指定対象として、複数の医療機器が有力視されている。具体的には以下の通りである。 体外式膜型人工肺(ECMO):血液に酸素を送り肺や心臓の機能を補う機器。新型コロナ禍では重症患者に用いられ、「最後の砦」と呼ばれた。部品の一部に中国への依存度が高いレアアースが使用されている。 人工呼吸器:新型コロナ禍で需要が急増し、世界各国で自国内への供給を優先する動きが起きた。日本は9割超を輸入に依存している。 透析関連機器:糖尿病などの患者に使用される。原材料の大半が海外産であるため、検討対象となる見通しだ。 企業への支援と2027年度予算の概算要求 国は製造・販売事業者が行う増産に向けた製造ラインの拡充や、備蓄用の倉庫整備といった経費に対して、その半分を補助する。厚生労働省は、この体制整備に関連する予算として、2027年度予算の概算要求で9億4000万円を計上した。企業に対して平時から代替手段の確保策を定めさせるとともに、経済的なインセンティブを付与することで、有事の際の供給不安を未然に防ぐ仕組みを整える。 今後の展望と検討の進め方 同省は来年度に設置する有識者検討会での議論を経て、具体的な指定機器のリストを固めていく。新型コロナウイルス感染症の流行下で、世界的な供給競争によって医療機器の入手が困難になった教訓が、今回の制度設計の根底にある。今後は、世界情勢の変化に柔軟に対応できる供給網を維持できるかどうかが、国民の医療アクセスを左右する重要な鍵となる。